オムニチャネルを加速させる技術(1): iBeacon

iBeaconとは、iOS7に標準搭載された以降から急速に着目されているBluetooth 4.0 (Bluetooth Low Energy)を利用した新技術です。ユーザがアプリをインストールしておくだけで、ある場所を通ると自動的にクーポンや情報を配信できるようになります。さらにBluetoothを利用しているため、iOSだけでなくAndroidでも同技術が適用することが可能になり、スマートデバイス全体で使うことができます。
これまではFelicaやNFCが多く使われてきましたが、ユーザが主体的に携帯電話をかざす必要があるため、利用用途が限られていました。その点、ユーザのアクションが必要なく、iPhone/Androidの両方で利用できるiBeaconはオムニチャネルの重要技術として注目されています。
iBeaconとは
Bluetooth Low Energyの電波を出す端末(Beacon端末)を店舗の至るところに配置し、それとスマートフォンが通信することで様々な動作を行います。Beacon端末は様々な企業から発売されており、代表的な企業は「BM1」を発売したアプリックス社です。
image from http://www.aplix.co.jp/?page_id=8212
Beacon端末:1個数百円・数センチで電池数年
大きさは数センチ大となっており、1個あたり数百円から調達することができるため、店舗内に100個導入しても数万円の投資にしかならないことが最大のメリットです。また給電は電池で行うことが基本で長いもので数年持つため、交換などの手間もかなり少ないことも特徴として挙げられます。
iBeaconの制限:スマホにアプリインストールが必要
Beacon端末はUUID(16バイト)、Major(2バイト)、Minor(2バイト)という3つの信号しか出しておらず、あとは受け手であるスマートフォンで全ての制御を行うことが厄介なところです。従って、iBeaconを使う場合、通信するスマホ側に必ずアプリをインストールさせることが必要になります。
iBeaconを利用したオムニチャネルの例
米国Apple Storeの例
image from http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1312/09/news026.html
AppStoreアプリをインストールしたお客様が展示テーブルに近づくと、端末の画面にiPhone紹介や下取りサービス表示、注文しておいたMacが準備できたという告知が注文番号と一緒に表示され、それを店員に見せることで製品を受け取ることができます。
小売大手パルコ社の例(tab社との共同実証実験中)
image from http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000006482.html
tabアプリをインストールしたお客様がパルコに近づくと、「近くに店舗がある」旨のポップアップが自動で表示されます。さらに店舗に入ると、至る所でクーポン等が配信されてきて、新しいショッピング体験を提供しています。
売上アップにつながるショッピング体験3Cの設計
iBeaconを利用した売上アップのポイントは「チャネルを超えた新しいショッピング体験を提供できるか」にかかってきます。下記はクライアント企業に提案している体験の一例です。
訪問した際にアプリ(モバイル会員証)をダウンロードしてもらい、その方に定常的にメルマガかポップアップを出していきます。その方が店舗に来店するとBeacon端末が反応してクーポンや最新情報を配信することができます。その方が仮に買わなかったとしても、その後に興味を持ってくれた商品を電話・メール・ソーシャル・店頭等の手段をフル活用してフォローを行い、最後に購入まで持って行く流れになります。当然ながら購入は店舗・WEBのどちらで買って頂いても同じ金額になります。
このようにどのチャネルから来たお客様でも、最適なチャネル(Channel)で最適なメッセージ(Communication)を最適な機会(Chance)に配信することで、売上向上につながっています。実際のクライアント事例としては、7ヶ月で売上が7倍になった例もあります。
iBeaconのソリューションベンダー
iBeaconを利用した様々なソリューションが誕生しています。
クーポン配信システム
- popiinfo(iRidge社):iBeacon, WiFi, GPSと連動してスマホ待受画面にポップアップを出すO2Oソリューション。NTTデータ社と資本提携を行っており、O2Oグランプリも受賞しています。
- STORE BEACON(日本写真印刷社):iBeaconを設置した店舗がクーポンを配信できるソリューション。店舗の行動をサーバに蓄積して、後に解析ツールで分析ができます。
- Profile Passport(ブログウォッチャー社):GPS, iBeaconと連動してクーポン等を配信できるO2Oソリューション。プライベートDMP cosmiRSと連携して、O2OとDMPの連携を図っています。
- potto(レピカ社):来店時にクーポンを出す以外に、ミッションをアプリに配信してゲーム感覚でコミュニケーションを行う等、ソーシャルメディアと融合させたソリューション。
CRMシステム
- UmeCa(ANALOG TWELVE社):iBeaconを利用して顧客にクーポン配信を行うと同時に、店舗型の端末に「○○様が来店」という情報が配信されるオムニチャネルCRMソリューション。NTTデータ社と提携して大手小売業に提供しています。
位置情報共有サービス
- tab(tab社):町中に設置してあるBeaconに反応して、興味がある場所をクリッピングできるサービス。
- スマポ(スポットライト社):登録店舗に行くだけでポイントがたまり、たまったポイントを商品券などの特典に交換することができます。
関連記事
-
-
オムニチャネルでおさえるべき6つの成功要因
小売業の売り上げ拡大のポイントとなっている「オムニチャネル」。 O2O(Online to Off
-
-
銀行でもオムニチャネル?
オムニチャネルという言葉が使われるのは、小売業界が殆どというイメージがあるかもしれません。 しかし
-
-
Amazonが突破する「リアル店舗」の壁
同業他社の追随を許さず成長を続けるAmazon。 Amazonはネットショップの枠を超え、今や小売
-
-
【2015年6月新製品情報】テーブルがBeaconに?
日々、新たな事例や製品がリリースされているBeacon。 単なるクーポン配信のツールとしてではなく
-
-
Apple Watchだけじゃない!ウェアラブルデバイス事例
2015年4月に発売が開始され、日本でも普及しているApple Watch。 実用化されているウェ
-
-
海外にみるBeacon実用事例
日本でもBeaconというコトバは広まりつつありますが、まだまだ知っているor使ったことのある人の割
-
-
オムニチャネル時代のデータ分析 #1
前回はアパレル業界におけるIT化の波ということで ・ARを用いた仮想試着 ・Beaconでの商品
-
-
オフラインでのリターゲティング
Webの世界ではかなり効果的に用いられているリターゲティング。 そんなリターゲティングがとうと
-
-
情報配信だけじゃない Beacon活用 #1
Beaconがオムニチャネルを加速させる技術として周知されるようになってきましたが、まだまだ"Bea
-
-
アパレル業界に押し寄せるIT化の波
日本国内のアパレル業界市場は縮小傾向にあると言われています。経済産業省によると、2013年のファッシ